「矛盾の水害対策」書評など

矛盾の水害対策」を出版して1年が経過し、新聞や雑誌に書評が出ております。また、ビデオニュースドットコムで、神保哲生さん、宮台真司さんと内容について議論しました(ココ)。
 取り上げてくださった方々、読者の皆様に厚くお礼申し上げます。以下に書評を紹介しますので、新泉社E-hon紀伊國屋Amazonで本の概要をご覧ください。

〇 毎日新聞2024/3/2 藻谷浩介氏書評(ココ
 一部分を引用します。「国土交通省河川局の大方針は、豪雨時の最大流量を予測し、それでも水が堤防を越えないように、上流にダムを設けて緊急時に貯水するというものだ。(中略)机上の計算を上回る豪雨も来襲する。それで実際に水害が起きると、裁判では国は責任なしとされる。(中略)その上に、人口減の日本では、新設増強どころか既存インフラの維持更新の負担も、年々重くなっている。人類種特有にして、過ぎれば自滅の元ともなる「改良追求欲求」。それをバックとする治水から、生物共通の「維持回復欲求」に則(のっと)る、被災を前提とした対処へ。(中略)その移行の先にあるのは、上流から下流までの利害関係者がテーブルについて当事者となり、自己利益を少しずつ通し合うように選択を行い、災害があれば維持回復への責任も少しずつ分かち合うという仕組みだ。水害対策の話に始まり、人類種の存続に向けた思索に広がる。渓流の水がやがて大海に出るがごとき読書の醍醐味(だいごみ)を、ぜひ皆さんにも味わっていただきたい。」
〇 日本經濟新聞2024/2/3 書評(ココ
 一部分を引用します。「治⽔の歴史や⽔害訴訟を振り返ると、確かに科学の知⾒と相いれない対策は数多い。川の付け替えやダムの建設など従来の『「改良追求事業」には限界が⾒え、森林や⼟壌の『維持回復事業』にかじを切る必要があるという。さらに、河川整備事業は国や⾃治体が住⺠らと協⼒して練り上げ、被害が起きても訴訟での対⽴が⽣じないようにすべきだと説く。」
〇 日本農業新聞2024/1/14 三省堂書店農水省売店店長 牛尾敏也氏書評
 一部分を引用します。「国土の上流をダムなどのインフラストラクチャーで固める国土強靭化事業は、農業や林業を壊滅させます。そんな公共事業は間違っていると森林水文学者の谷誠氏は著書『矛盾の水害対策』(中略)で訴えます。(中略)著者は地球と生物の関わり合いは人々の常識以上に巧妙で壮大なもので、生態系を構成する植物や微生物の巧みな生き方こそ重要といいます。」
〇 林業経済2024 年 77 巻 7 号 p. 19-23 関良基氏書評
 この書評は、ココに公開されております。そこでは、「谷氏も委員の一人であった日本学術会議『河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会』は、森林成長の効果は50年では年月が短すぎ、『パラメータ値の経年変化は検出できなかった』という結論を押し通してしまった」と記述され、厳しいご指摘をいただいています。谷の考えは、第3章に書いておりますので、ご興味のある方はぜひ両方をお読みいただけたらと思います。